お知らせ
vol.18 手洗いについて
1999/03/26 アーテック倶楽部ニュース
連載★ HACCPこわい!?食品安全再点検★
「洗浄:手洗い」
1:食品取扱者は、環境由来菌も対象に!
よく、手洗いについて「せっけんをつけてブラシで洗い、せっけんをよく洗い流し、逆性せっけん液をつけて二分以上手指をよくこする。」と指導されています。
では、なぜこのような厳密な手洗い指導がされているのかについて考えてみましょう。
手指には、無害な表皮ブドウ球菌などの多くの菌が皮膚表面に定住していて、これを「常在菌」と呼んでいます。一方、食品原材料をはじめ、種々の機械器具に触れる手指は、絶えず細菌汚染を受けることとなり、環境由来の病原菌・腐敗菌などの二次汚染の危険性もっています。この手指を汚染する菌を「通過菌」と呼んでいます。 この通過菌は手指表面に安住している常在菌によって定着を妨げられるために、せっけんで洗うだけで洗い流されてしまいます。
つまり、「椅子取りゲーム」に負けて、立ったままの不安定な状態のために排除されやすいのです。
この「椅子取りゲーム」は腸内でも常在菌と病原菌の間で行われており、このことが同じ食品を食べても、食中毒にかかる人とかからない人がいる要因の一つでもあり、腸内細菌のバランスを保つように気をつけることが、病原菌に対する抵抗力となります。それにも係らず、調理前や調理作業中に洗浄殺菌剤で手洗いするのは、次のような理由があるからです。
一つには、傷や手荒れのある手指には、黄色ブドウ球菌が常在化していることがあるためです。
食品などから汚染した菌は通過菌ですから落ちやすいのですが、常在化してしまうと殺菌剤を使用しないと落ちにくくなります。
次に、調理作業中に手指は絶えず細菌に汚染されるので、この環境由来の病原菌・腐敗菌を殺菌することが必要となります。
作業中に連続的に汚染する細菌を殺菌するためには、洗浄殺菌剤を使用しないと期待される効果が出ないのです。
なお、殺菌剤は常に微量が皮膚上に残留し、その後の菌数の増加を抑制する作用をするとされています。
2:食品の細菌基準と除菌
営業者がもっとも参考にしている「弁当及び惣菜の衛生規範:厚生省」では、卵焼き、フライなどの加熱したものの細菌基準が、次のように決められています。
細菌数(生菌数)は、検体1gにつき10万以下であること。
大腸菌は陰性であること。
黄色ブドウ球菌は陰性であること。
この基準を守るためには、手指をはじめ機械器具類の洗浄殺菌を充分にしておかないと困難です。
多くの食品に指導基準などが定められていますが、これは消費期限日当日も適用される基準であり、製造直後の検査で基準以下であったとしても、期限内に基準を超えることは許されません。細菌は日が立つにつれて徐々に増えることがあり、黄色ブドウ球菌も製造直後には陰性であっても、数日後に陽性になるケースもあります。
細菌数もこの基準内におさめるためには、製造後の増殖を考えると徹底した衛生管理が必要となります。
このことを充分理解し、手指などの洗浄殺菌をすることが大切です。
(参考資料:食品衛生/1997年11月号/社団法人日本食品衛生協会刊 )
5/14号につづく