お知らせ
vol.6 ドライ釜のコンセプト
1998/06/26 アーテック倶楽部ニュース
連載★ HACCPこわい!?食品安全再点検★
先回のつづきは、「ドライケトル」という新型の釜について、厚生省のマニュアルと、
床からの高さの話しでした‥‥
皆さんもご存知の様に、煮炊釜は厨房の中で最も汎用性の高い万能調理器具の一つです。
加熱を伴わない「サラダ」や「和え物」の調理用としても一部の学校給食センターでは活用されており、これらの品目は食中毒と無縁であるどころか非常に危険性のたかい調理と言えます。
昨年の「フードケータリングショー」で「ドライケトル」を見られた学校給食関係者の方々の中には、「釜の高さが高すぎて攪拌作業がやりにくいのではないでしょうか?」という意見を出された方もみえました。重要な意見であり、今後、皆さんがもっと多くのお客様の意見を集めて完成度を上げていかなければならないのが「ドライケトル」だと思います。
しかし、それにも増して「う~ん、これが厚生省で決まったことを実現した釜か ! こんな風にして行かなければならないのか ! 成る程なあ。」という感嘆ともとれる肯定的なお声をたくさん聞かせて頂きました。一昨年来の「O-157」事件で日本の食品安全に対する考え方は確実にかわりましたが、製品開発の考え方もその時、同時にかわったのです。
機能・操作性と同一レベルで「食品安全」に重点を置かなければならなくなったことが。ちなみに「ドライケトル」の調理物取り出し位置は、床から77cmもあります。
「ドライケトル」が床からの跳ね水による食中毒菌の汚染を防止するために、調理物取り出し高さを60cm以上(77cm)に設定された根拠は、前号でお話した通りですが、この釜にはもう一つ、この床上高さが高くなった事をマイナス要因としてもまだ余りある有効な装備があります。
それが「ストレーナー」です。
この「ストレーナー」、私は従来の「排水ドローバルブ」や「サニタリーバルブ」にとって替わる、つまり「ドライシステム厨房」を変える可能性のある装備ではないかと考えています。
根拠は一つ「衛生的」であることです。
日本の「厚生省」や「文部省」がHACCPを食品安全の考え方のベースにして(HACCPの概念には無いけれど)選択した厨房環境が「ドライシステム厨房」ですからなおさらです。「排水ドローバルブ」や「サニタリーバルブ」の一番の問題点は、食品カスが溜まりやすく、掃除がし難いところです。つまり、細菌の温床になる不衛生な状態を生み出しやすい。二次汚染防止のための厨房環境がこれでは本末転倒と言えましょう。(もちろん、非常な努力の元に常にバルブの分解掃除を行って衛生環境を維持している学校給食センター様の存在する事実も否定はしません。)でも「ストレーナー」はその構造が非常に単純であるために、掃除がし易く、衛生的な状態の維持にほとんど手間がかかりません。
しかも、調理物(茹で物)の水切りや、釜洗浄後に食品カスの除去をしながらの排水などバルブ方式に比べて短時間で行えますので、作業効率も向上します。結果として、釜の排水が流れ込む排水溝に溜まる食品カスも減少して掃除しやすくなります。「床に排水をこぼして床を濡らしてしまうじゃないか!」という疑問もあると思います。
従来の排水ドロー釜にあわせた排水溝が構築してある厨房への入れ替えでは、やはり難しいでしょうね。でも、新規であれば、排水溝をストレーナーの排水位置に合わせて設置すれば良いのですから簡単だと思います。「ドライケトル」がその排水方法に「バルブ」でなく「ストレーナー」を装備した意味が解っていただけましたでしょうか?
やっぱりキーワードはHACCPをベースにした「食品安全」だったのですよ。
7/10号につづく